シリーズ イギリスの食を知る ー今回のテーマは「お米」ー 第3話〈終〉

お米 イギリス  ー Japanese cultural event featured on Japanese in the UK


価格だけで選ぶのではなく、やはり健康を考えるなら「どんな基準で育てられたお米か」も気になります。今回は、イギリスで流通しているお米の安全性について少し掘り下げてみようかと思います。




●イギリスの農薬基準はどうなっている?

初っ端からですが、私の認識は間違えていました!
てっきりイギリスの農薬基準は日本よりも厳しいため、より安全な食品が食べられると思っていました。
調べてみると、少し違ったようです。

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▽食品全般について

イギリスでは、販売されるすべての食品に対して「最大残留農薬基準(MRL)」が設けられています。これは、作物に残っても健康に影響がないとされる農薬の上限量を意味しており、それを超える食品は販売が禁止されています。

この制度は、もともとEUの規則に基づいて構築されたものでした。Brexit後も基本的にはその枠組みを維持しています。ただし、イギリスでは一部の農薬に関して残留基準が緩和されたことがわかりました。


もちろんすべての食品が危険というわけではありませんし、政府の検査体制は続いています。

イギリス政府は、食品基準庁(FSA)や農薬規制庁(HSE)を通じて、輸入品を含む農産物のモニタリングを継続的に行っています。万が一、基準を超える残留農薬が検出された場合には、販売停止や回収などの措置が講じられます。

〈参考:英国農業園芸開発委員会AHDBの食品安全ページ https://ahdb.org.uk

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▽お米について

お米についても同様で、市場に流通する商品はこれらの検査を経ており、現行の安全基準を満たしていると考えられます。だから、極端に不安になる必要もないですし、産地や製造方法、認証の有無など、自分なりの判断材料を持つことはできます。 「知って選ぶ」ことが大事なのかもしれません。

近年、アメリカで基準値を超えるヒ素が検出されたお米が話題になりましたが、実はどのお米にも、ごく微量のヒ素が含まれています。イギリスは定期的にヒ素残留検査を行っており、EU時代の厳格な上限値が基本的に維持されています。

ヒ素については過剰に心配する必要はありませんが、もし気になる方は、お米を研いだあとに一度しっかり水を切って、新しい水に浸して炊くことで、ヒ素の一部を減らすことができます。

ちなみに私はまったく神経質ではないので、このことを知ってもいつも通りの炊き方をしています。(笑)

〈参考:the Rice Associationのヒ素とお米のページ https://www.riceassociation.org.uk/arsenic-and-rice





●「無農薬」「有機」「基準値以下」はまったく別のもの

ここで注意したいのは、「無農薬」「有機(オーガニック)」「残留農薬が基準値以下」というのは、それぞれ、意味するものや栽培方法がまったく異なるということです。

無農薬栽培中に一切の農薬を使っていないことを意味します。ただし、日本ではこの表記は誤解を招くため、2003年以降表示が禁止されており、実際にそのような農産物はごく限られています。
有機(オーガニック)化学合成農薬や化学肥料を使わず、自然由来の資材で栽培します。必要に応じて天然由来の農薬は使用可能で、「有機JAS」「EUオーガニック」「UK Soil Association」などの第三者認証制度があります。
残留農薬が基準値以下農薬は使用されていても、収穫された食品に残る量が国の安全基準(MRL)以下に抑えられている状態です。多くの市販品がこれに該当します。

※有機JASとは…日本の農林水産大臣が定める有機食品の国家規格
※EUオーガニック認証とは…EUが定めるオーガニックの認証制度
※UK Soil Associationとは…英国で最大の有機認証機関であり、健康で持続可能な食料、農業、土地利用のためのキャンペーンを行う慈善団体



特にお米は、水田での病害虫対策のために農薬が使われることが多く、完全な無農薬での商業栽培は非常に難しいとされています。
そのため、イギリスで「安心なお米を選びたい」と考える場合は、「無農薬かどうか」よりも、「どのような基準で管理されているか」や「検査が行われているか」に注目することが大切かもしれませんね。

イギリス お米について ご飯  ー Japanese cultural event featured on Japanese in the UK

イメージ画像です。あくまでもイメージです。食べたいです。









さて、私はというと第1話でお話しした通り「Emma Basic – Japonica Rice」を定期購入しています。
これまで何気なく選んでいたこのお米を、この流れで調べてみることにしました。

お米のパッケージの裏側には、
●日本の140年以上歴史がある老舗企業が選んだジャポニカ短粒米の品種
●ベトナム南部の別名「ベトナムのライスボウル (米どころ)」と呼ばれるメコンデルタ産
●3期作により、常に新鮮な状態で供給が可能
●日本製の最新機械を使用し、熟練した技術者によって製造

と書かれています。

Emma おコメ ー Japanese cultural event featured on Japanese in the UK

第1話から再掲載。Emma Basicお米のパッケージ裏側です。


ちなみにパッケージには記載がありませんが、公式サイトには「FOOD SAFETY, LEGALITY, AUTHENTICITY, QUALITY – our manufacturer operates under BRC & FSSC programs.」という記述がありました。
製造元が「BRCおよびFSSCプログラムの下で運営されている」という意味です。
出典:Emma Basic公式サイト

※BRCとは…英国の小売業界団体である「British Retail Consortium(英国小売業協会)」の略称です。また、BRCが発行する食品安全基準である「BRCグローバルスタンダード」や、それに基づく認証制度もBRCと呼ばれます。具体的には、食品の安全性、品質、合法性を確保するための規格であり、世界中で広く採用されています。
※FSSCとは…中小企業が輸出促進や取引拡大を図るために適した、食品安全システムの開発プログラムです。

これらから、きちんと管理されている様子が読み取れます。

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さらに調べてみると、思いがけない事実が判明しました。
ブランド名「Emma Basic」の”Emma”とは、創業者の名前だったということ。
しかもこのEmmaさん、日本と深い関わりがあったのです。
日本の大学に通い、その後イギリスへ渡って日系食品会社に勤務。
その後独立し、「Emma Basic」ブランドを立ち上げたそうです。
そして、「添加物不使用」をモットーに、生産にも強いこだわりを持っていることがわかりました。

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欲が出た私は、会社に質問メールを送ってみることにしました。
内容は次の2点です。

1. 日本と深いつながりがあるにもかかわらず、なぜ日本ではなくベトナムで生産されているのか
2. 製品の安全基準や品質管理のプロセスについて、もう少し詳しく知りたい


見たことも聞いたこともない一般の消費者からのメール。しかも、送信先が部署違いだった可能性もあります。それにもかかわらず、私の問いに対して、とても丁寧で真摯なお返事をいただきました。

残念ながら、お米の製造に関する部分は非公開ということで掲載できませんが、ブランド「Emma Basic」や運営会社「The Basic Ingredients Ltd」の理念については、掲載のご許可をいただきました。

The Basic Ingredients Ltd is a BRCGS-certified Grade AA food company specialising in clean-label products. Often called “Clean Dec” among food technologists, clean label is not yet a familiar phrase to consumers.
What is clean label? It simply means products made without additives.
What Are Food Additives? Food additives are substances added to enhance flavour, colour, shelf life, or texture. Whilst thousands are legally permitted and regulated by authorities, are they good for your well-being? Probably not! Here are a few common examples: Emulsifier E471 (used in most of well-known ice-cream brands); Brilliant Blue E133 (used as colouring) and Xanthan Gum E415 (used as thickener in Wasabi paste); Aspartame E951 (used as a sweetener in Diet Cola).
Emma Basic is a clean-label brand and a registered trademark, proudly owned by The Basic Ingredients Ltd. At Emma Basic, we go further than just removing additives. When developing a product, we eliminate UPFs like refined seed oils, we reduce plastic in package, we allow only a minimal number of ingredients that are nourishing, natural —to support real well-being. We love what we do, and we truly believe we’re making a difference. A shift toward a healthier food industry and a more sustainable planet.

〈翻訳〉
The Basic Ingredients Ltd は、クリーンラベル製品を専門とする、BRCGS認証グレードAAの食品会社です。
食品技術者の間では “Clean Dec” と呼ばれることもありますが、クリーンラベルという言葉は、消費者にはまだあまり馴染みがありません。
クリーンラベルとは何でしょうか?
それは単純に、添加物を使わずに作られた製品を意味します。
食品添加物とは何でしょうか?
食品添加物とは、風味、色、保存期間、または食感を高めるために加えられる物質です。
何千もの添加物が法律で許可され、当局によって規制されていますが、それらが健康に良いかと言われれば――おそらく違います!
よく知られている例をいくつか挙げましょう:
乳化剤 E471(ほとんどの有名なアイスクリームブランドで使用されています)、
着色料 ブリリアントブルー E133、
増粘剤 キサンタンガム E415(ワサビペーストに使用)、
甘味料 アスパルテーム E951(ダイエットコーラに使用)。
Emma Basic はクリーンラベルブランドであり、登録商標です。
Emma Basic は、The Basic Ingredients Ltd によって誇りをもって所有されています。
Emma Basic において私たちは、単に添加物を除くだけではありません。
製品を開発する際、私たちは精製された植物油のような超加工食品(UPF)も排除し、パッケージのプラスチックを削減し、栄養があり自然な、最小限の数の原材料のみを許可しています――それは真の健康をサポートするためです。 私たちは自分たちの仕事を愛しており、本当に違いを生み出していると信じています。
より健康的な食品業界と、より持続可能な地球へと向かう転換を。

補足 – ※BRCGS認証のグレードAAは、食品安全監査において、5つ以下の軽微な不適合(マイナー)しか認められない最高レベルの認証です。つまり、工場や製造施設の食品安全管理システムが非常に優れていることを示しています。


ここまでしっかりとしたポリシーを掲げている会社の食品なら安心して食べることができそうです。
「Emma Basic」はお米だけに限らず、調味料、カレー粉なども販売しています。備長炭までありました!
そして、パッケージのデザインもシンプルで好きだったりします。
このまま引き続き利用しようかと思います。全くもって企業案件ではありませんが、「Emma Basic」は推しです。(笑)

EmmaBasic Sushi Rice 5kg  ー Japanese cultural event featured on Japanese in the UK

5Kgのお米もあるようです。10kgと精米所が違うらしいので、近いうちにこちらも試してみようと思います。
(画像提供:The Basic Ingredients Ltd)

Emma Basic 公式サイト




3回シリーズでお届けした「シリーズ イギリスの食を知る ー お米」は、今回で終了です。
長々とお付き合いいただきまして、ありがとうございました。
皆さまが健やかなお米ライフを過ごせますように。

美味しいご飯が用意できたなら、次に必要なのは美味しいおかずです。
とても紹介したい料理があるので、それはまたの機会にご紹介します。

イギリスで楽しい生活を!

(2025年07月10日掲載)


Part 1「日本とイギリスの”米”事情」
Part 2「ねえ、どのお米買ってる?アンケート結果発表!」